金子光晴の真骨頂

 じっさい、自伝的歴史エッセー『絶望の精神史』を読んでいると、金子光晴がたえず「世相の変転相」をみつめて、否、にらみつけて、目をそらすことがないのを感じさせられます。それをもっとも象徴的にしめすのは、この一冊の山場ともいえる関東大震災をめぐるくだりでしょう。(中略)
 金子光晴の真骨頂は、そうした「世相」のさらに向こうに、人々をおそった測りがたい失墜感を見通し、きっかりと明晰な理知で分析するところにあります。


【『〈〉が選んだ入門書』山村修ちくま新書、2006年)】


“狐”が選んだ入門書 (ちくま新書) 絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)