2011-01-14 金子光晴の真骨頂 抜き書き じっさい、自伝的歴史エッセー『絶望の精神史』を読んでいると、金子光晴がたえず「世相の変転相」をみつめて、否、にらみつけて、目をそらすことがないのを感じさせられます。それをもっとも象徴的にしめすのは、この一冊の山場ともいえる関東大震災をめぐるくだりでしょう。(中略) 金子光晴の真骨頂は、そうした「世相」のさらに向こうに、人々をおそった測りがたい失墜感を見通し、きっかりと明晰な理知で分析するところにあります。 【『〈狐〉が選んだ入門書』山村修(ちくま新書、2006年)】 山村修