少年兵−捕虜を殺す競争

 中尉の演説のあと、彼のやり方にならって捕虜を殺す練習が始まった。5人の捕虜に、おおぜいの熱心な参加者。それで伍長は、ぼくらのなかから何人かを選んだ。ケネイとほかに3人の少年、そしてぼくが選ばれて、公開処刑をすることになった。5人の男たちが、両手をしばられた格好で、訓練場のぼくらの目の前に並ばされた。伍長の命令で、ぼくらはこの捕虜たちの喉を切ることになっていた。あてがわれた捕虜をいちばん早く殺した者が、この競争の優勝者だった。ぼくらは銃剣を抜いていて、捕虜をこの世から葬り去るとき、まともにそいつの顔を見なければならなかった。ぼくはすでに自分の捕虜を見つめはじめていた。そいつの顔は平手打ちをくらって腫れあがっていて、目はぼくの背後の何かを見ているようだった。顔のなかで、口元だけが緊張していた。ほかは何もかもが穏やかに見えた。ぼくは相手に何も感じなかったし、自分のしていることについてそれほど深く考えなかった。とにかく伍長の命令を待った。この捕虜だって反乱軍の一人だ、ぼくの家族を殺した責任があるじゃないか、と本気で信じるようになっていた。伍長がピストルを鳴らして合図をすると、ぼくは男の頭をつかみ、すべるような動きで喉を切りつけた。切っ先が喉仏(のどぼとけ)に突き通ったら、鋸刃(のこぎりば)を当てて回しながら銃剣を引き抜いた。男は目を剥(む)いてまっすぐぼくをにらんだあと、まるで不意打ちをくらったかのように、突然恐ろしげな一瞥(いちべつ)をくれたまま固まった。そしてぼくに身体をあずけて最期の息を吐いた。ぼくは男を地面にほうりだし、銃剣の汚れをそいつになすりつけた。タイマーをもっている伍長に報告した。ほかの捕虜たちの身体は、ほかの少年たちの腕のなかで抵抗し、あるものは地面でしばらく震えつづけた。ぼくが優勝、ケネイが2位だと発表された。見物していた少年たちやほかの兵士たちは、ぼくが人生最大の偉業をなしとげたかのように拍手した。ぼくは准中尉、そしてケネイは准軍曹の階級を与えられた。ぼくらはその日、いつもより多いドラッグと、いつもより多い戦争映画とで祝った。


【『戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった』イシメール・ベア/忠平美幸〈ただひら・みゆき〉訳(河出書房新社、2008年)】


戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった