しかし、投資の対象として、株を買うことはしません。それは現在、私が作家として糊口を凌いでいるからです。作家に経済合理性と異なる発想がないと、よい作品はできないと考えています。資本主義社会において、カネでほとんどの商品やサービスを購入することができます。言い換えると、カネで欲望のほとんどを満たすことができるのです。それだから、カネを支払うことで他人に自分の意志を強制することができるようになります。カネは権力と代替可能で、暴力性をもっています。カネを追求し始めると作品が暴力的になっていくことを私は恐れているのです。
【『インテリジェンス人生相談 社会編』佐藤優〈さとう・まさる〉(扶桑社、2009年)】