古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

村上陽一郎、南淵明宏、谷口義明


 1冊挫折、2冊読了。


 挫折82『現代科学論の名著村上陽一郎編(中公新書、1989年)/「編集にあたって」という前書きで挫ける。何言ってんだか全然わからず。


 138冊目『心臓は語る』南淵明宏〈なぶち・あきひろ〉(PHP新書、2003年)/好著。それもそのはず著者は『ブラックジャックによろしく』の北三郎のモデルになっている人物。現役の心臓外科医だ。わかりやすい文章でありながら、内容が軽くなっていないところがミソ。心臓って凄いよ。一読すれば心臓を見る目が変わる(見えないけどさ)。医療機関の現実にも触れていてバランスがとれている。実は「心臓から送り出された血液は13秒で体内を一周する」ということだけを確認する目的で読んだのだが、開けてびっくり玉手箱だった。


 139冊目『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは谷口義明講談社ブルーバックス、2005年)/「いやあ新書って本当に面白いですね」と水野春郎なら言うところだ。先に挙げた本も同様。後半はやや難しいが、文章がいいのでどんどん読める。暗黒とはブラックホールダークマターダークエネルギーのこと。プロローグとエピローグがまた上手いんだ。神と僕(しもべ)とのやり取り。目に映る物質の量は宇宙全体の質量の4%に過ぎない。宇宙はスカスカの空間だらけだ、と思いきや、実は23%がダークマターで、73%をダークエネルギーが占めていることが明らかになりつつある。これが昂奮せずにいられようか! 近年見直されている宇宙項(宇宙定数)についても丁寧な解説がある。宇宙を見る目が変わる。同じ締めくくり方をして気づいたが、本物の知識や思想って「見る目」を変えるものなんだよね。