誕生も死も科学的に管理されている

 科学に管理されるに至ったのは死だけではない。誕生もそうだ。現在ではほとんどの赤ちゃんは病院で生まれる。ところが、ある大病院の産科では、朝の9時から夕方の5時の間にしか生まれないという。産婦人科の学会のある日には一人も生まれなかったりするのである。つまり、生まれてくる日も時間も、陣痛促進剤によってコントロールされているのだ。
 今、若者や子どもが荒れていると言われている。すぐキレる、待てないというのが特徴だという。これは無意識が荒れているとしか思えないではないか。
 人の無意識はいつ形成されるか。母親の胎内にいるときと2歳までだと言われている。子供たちは体内にいるときから待ってもらってないのだ。ちゃんと成熟して母親の産道を苦しみながら出てくるという体験をさせてもらえないのである。
 陣痛促進剤に無痛分娩、帝王切開という専門的で科学的な出産方法が都会で急に増え始めたのが、荒れる若者たちが誕生した頃からではないか、というのは門外漢である私の推論であるが、この説を聞いた関係者の多くが「そのとおりなんですよ」と言うのである。


【『老人介護 常識の誤り』三好春樹(新潮社、2000年/新潮文庫、2006年)】


老人介護 常識の誤り 老人介護 常識の誤り (新潮文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)