古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

池内恵


 1冊読了。


 136冊目『書物の運命池内恵〈いけうち・さとし〉(文藝春秋、2006年)/池内恵は1973年生まれ。気鋭の中東研究者である。エッセイも書評もイスラムに関するものとなっているが、練達の文章でぐいぐい読ませる。2ページ目であっと声を上げた。何と池内紀の子息であった。どうりで文章が上手いわけだ。家にはテレビもなかったそうだよ。白眉はバーナード・ルイス著『イスラム世界はなぜ没落したか?』を巡る問題提起だ。国内における中東研究に対して真っ向から異を唱え、一石を投じている。ま、早い話が喧嘩を売ったわけ。若さとは向こう見ずの異名でもある。喧嘩は大歓迎だ(笑)。しかし池内は抑制した筆致で筋を通している。中東研究というムラは日本社会の縮図そのものに見えてくる。いよいよ70's(1970年代生まれ)の台頭だ。