古本屋の覚え書き

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『自己組織化と進化の論理 宇宙を貫く複雑系の法則』 スチュアート・カウフマン/米沢富美子訳(ちくま学芸文庫、2008年)



自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)

 キリンの首はなぜ長いのか――「突然変異」と「自然淘汰」により進化したからだ、というダーウィンの進化論はあまりにも有名だ。しかし、自然淘汰だけで生物界の詳細な構造は説明できないことを著者は指摘する。そして、生物における秩序の多くは自然淘汰の結果などではなく、自己組織化された自発的秩序だと述べている。分子から細胞が組織され、細胞は恒常性を保ち生物を形作り、そして生物が集まり組織化されることで生態系が生まれている。確かに著者が指摘するように、すべての生物が偶然の産物と考えるよりは、調節的なネットワークによる自己組織化がもたらす秩序であると考える方が説得力がある。


 著者は、この自己組織化の基本原理により、進化のビックバンや生命の必然性も説明している。さらには生物の進化や生命体の営みのみならず、さまざまな技術が競い合うことで技術が進化すること、また社会のルールとしての民主主義体制の合理的説明さえも自己組織化の理論で裏づけることができると述べている。これらの仕組みは複雑系の法則として発見されつつあるのだという。