大乗仏教運動の担い手は革新的な出家僧だった

 以前は、大乗仏教は、複雑きわまるスコラ的論争に熱中して、人々の救済をほったらかしにした僧院中心の仏教に愛想をつかした在家の信者たちが起こした運動からはじまったという説があったが、現在では否定されている。いわゆる大乗仏教運動は、僧院の中の革新的な出家僧が主な担い手だったらしい。
 後期仏教は7世紀から13世紀はじめにあたり、密教が興隆した時期にほかならない。ただし、この時期になると、5世紀ごろから勢力を増したヒンドゥー教の攻勢に圧倒されて、仏教は明らかに衰退気味になっていた。密教が登場してきた理由も、ヒンドゥー教の攻勢に対する仏教なりの反応あるいは対抗策だった面がいなめない。さらに、西方からやってきたイスラム教の勢力から攻撃されて、後期仏教の時代は苦難の連続と化した。
 結局、13世紀の初頭、インド仏教は、ヒンドゥー教イスラム教に挟み撃ちにされるかたちで、滅亡した。具体的には、密教を中心に仏教勢力にとって最後にして最大の拠点となっていた東インドのヴィクラマシーラ大僧院がイスラム勢力に焼き討ちされて、インド仏教は滅び去ったのである。


【『マンダラとは何か』正木晃(NHKブックス、2007年)】


マンダラとは何か (NHKブックス 1090)