かつて、フランスの偉大な歴史家エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリが、歴史家にはふたつのタイプがあると語っている。落下傘兵タイプと、トリュフ狩りタイプである。落下傘兵タイプは過去をはるか彼方から眺め、ゆっくりと地上に舞い降りてくる。一方、トリュフ狩りタイプは土中に埋もれた宝に魅せられ、地面から鼻を離そうとしない。日常の生活においても、落下傘兵タイプの気質の人もいるし、細々としたことに心を砕くトリュフ狩りタイプの人も大勢いる。われわれは過去を研究する際にも、この気質の重荷をつねに背負っている。
【『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン/東郷えりか、桃井緑美子〈ももい・るみこ〉訳(河出書房新社、2001年/河出文庫、2009年)】