古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

金本位制度におけるデフレ

 なぜこういうことが起こったのか? 簡単な例で説明するとこうだ。いまここに1ミリグラムの金があり、それを日本政府が100円と評価して法律に定めたとしよう。また、初めの状態では、ボールペン1本が金1ミリグラムと同じ価値を持つと考えることにする。したがってボールペン1本の価格は100円である。さて、世界で金に対する需要が増加したため、金の価値が増加し、1ミリグラムの金はもはやボールペン1本ではなく、その倍の2本分の価値を持つようになったとする。しかし、金1ミリグラムを100円とする法律自体は動かしようがないから。このとき変化するのは金の価格ではない。ではなにが変化するのか? 金(通貨単位)で測られたボールペンの価格が下落するのである。ボールペンの価格は1本=100円という水準から、2本=100円、つまり1本あたり50円に半減する。金価値が上昇した場合、「金本位制」を採用している国で「デフレ」が起こるのはこういうわけだ。


【『世界デフレは三度来る』竹森俊平(講談社BIZ、2006年)】


世界デフレは三度来る 上 (講談社BIZ) 世界デフレは三度来る 下 (講談社BIZ)