古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

木村政彦が生まれた日


 今日は木村政彦が生まれた日(1917年)。姿三四郎の作者の富田常雄は「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」とその強さを称賛した。


 同じく史上最強と評価されることもある山下泰裕と木村両方の全盛時代を知るライバル広瀬巌は「今、山下君が騒がれているけれど、木村の強さはあんなものじゃなかったよ」と言い、1948年の全日本選手権を制し東京五輪監督も務めた松本安市は「絶対に木村が史上最強だ。人間離れした強さがあった。ヘーシンクも山下も含めて相手にならない」と語っている。


 また、前三角絞めの開発者として有名な高専柔道出身の早川勝(旧制六高OB、元日経連専務理事)は「較べものにならない。山下君もたしかに強いけども、僕らの時代は木村先生と何十秒間試合できるかというのが話のタネだった」と言う。


 同じく両者の全盛時を見ている柔道新聞主幹の工藤雷介は「技の切れ、凄さからすればやはり木村君だ」と断言し、直木賞作家の寺内大吉も「戦中の木村柔道をぼくはほんの二試合ほどしか見ていないが、それでも『鬼の政彦』を実証する強さだった。もちろん比較はできないが山下泰裕より遙かに上位をゆく豪力であったと思う」と言っている。


 また、木村の愛弟子で全日本選手権も獲っている岩釣兼生は現役時代に50歳の木村とやっても寝技ではまったく歯が立たなかったようで、「木村先生のパワーにはぜんぜん敵わないと思いますよ。山下君にも間違いなく腕緘(うでがらみ)を極めるでしょう。これは断言できます。私でもロジャース(東京五輪重量級銀メダリスト)でも寝技でぼろぼろにやられましたから」と言い、同じく木村に稽古をつけてもらった弟子蔵本孝二モントリオール五輪軽中量級銀メダリスト)は「(山下とは)ぜんぜん問題にならないです。立っても寝ても腕緘一発です」と断言している。


 拓殖大学の後輩で極真空手創始者である大山倍達も実際に木村の試合を観戦しているが「木村の全盛期であればヘーシンクもルスカも3分ももたないと断言できる」と述べている。


ゴング格闘技』誌が「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(増田俊也)という評伝を長期連載中で、書評紙・誌で話題を呼んでいる。この連載では昭和29年12月22日の力道山戦の謎に迫りながら、怪物木村政彦の知られざる側面を描き出している。


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