古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

森本哲郎、ブレヒト


 1冊挫折、1冊読了。


 挫折66『信仰のかたち森本哲郎(新潮選書、1982年)/知らない人がいるかもしれないので、念のために書いておくが森本毅郎のお兄さんである。この人の文章はわかりやすいのに奥深い味わいがある。これだって、いい本なんだ。ただ私がわがままなだけ。世界各地の宗教遺跡を巡った紀行文風エッセイだ。チト軽すぎますな。読まなきゃならない本が溜まっていて、こんな本を読んでいる場合じゃないんだよ、ってな印象。


 111冊目『ブレヒトの写針詩』岩淵達治編訳(みすず書房、2002年)/初ブレヒトみすず書房の本は読みやすい。もう少しフォントが縦長で、等幅にしてくれりゃ完璧なんだが。これはめっけものだった。ブレヒトは東独の作家である。もちろん共産主義者。人間を見つめる視点が確かのは、ブレヒトがシステムではなく「こと」を重んじていたためだろう。硬直した市場原理主義者よりも、柔軟な共産主義者の方が共感できる。真の芸術は政治色を超えるというモデルになっている。写真ではなく写針となっているのは、寸鉄を印象づけようとしたものらしい。名言集の類だが、確かに警句の余韻がある。