『眼と精神』M・メルロ=ポンティ/滝浦静雄、木田元訳(みすず書房、1966年)



眼と精神

 ……メルロは、ためらって言った、《ぼくは多分、自然について書くことになるだろう》。彼は、私の考えの方向を決めてくれようとして付け加えた。《ぼくはホワイトヘッドの中で、自然はぼろ布の中にあるという、驚くべき文章を読んだのだ》。……私は意味がよくわからずに、彼と別れた。その頃私は《弁証法唯物論》を研究していたから、《自然》という言葉は、私には、われわれの物理・化学的認識の総体を想い起こさせた。……私は、彼の考える自然が、感覚的世界、われわれが物や動物に出会ったり、自分自身の身体や他人の身体に出会ったりする《思いっきり広範な》世界のことだということを忘れていたのだ。それがわかるには、彼の最後の論文『眼と精神』の出版を待たねばならなかった。