古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

自民党が権力の座を維持してこられた本当の理由

 自民党が権力の座を維持してこられた本当の理由は、ゲリマンダー、すなわち自党に有利な選挙区の改変・維持にある。自民党に必要な全投票数の約48パーセントを確保するために金をばらまき、そして、農村地域の基盤(インフラストラクチャー)整備をすすめるには自民党の候補者を選ぶしかないという口上を、地元の有権者にくり返したたき込む作戦である。自民党によって作り出された今の地方の状況からいうと、実に的を射たくどき文句である。制度的に地方自治体は、中央官僚によって割り当てられる一連の補助金に大きく依存している。この補助金制度は、公平な規則によって運用されているわけではない。割り当てる側の中央省庁の役人との間をとりもってもらうのに、政治家が必要になる。そして、自民党の政治家が、唯一ではないまでも、いちばんのコネを持っている。そこで、自民党の政治家は、地元有権者の欲する公共事業に必要な予算を割り当てる官庁担当者とつながりがあることを、選挙運動の目玉として強調する。不正な選挙運動に手をかすのは、中立がたてまえの農協、おびただしい数の建設会社、そして自社の施設を事実上の選挙事務所に提供するその下請け企業である。


【『日本/権力構造の謎』カレル・ヴァン・ウォルフレン:篠原勝訳(早川書房、1990年/ハヤカワ文庫、1994年)】