古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

富の再分配と貧困の再分配

 日本企業が一斉に売り出した開発物件の中から、不当に低評価を与えられたものを、こまめに爪で拾うようにして買い漁ったのが、香港、マレーシア、シンガポール系の資本であった。ひどい例だと、開発費用の20分の1程度の値段で買い取られたものもあった。「富の再分配」である。いいことだ。「富の再分配」が「貧困の再分配」(これをわたしは「貧困の近代化」と呼んでいる)に結びつかない限りにおいては、まことに恭賀の至り。


【『無境界の人』森巣博〈もりす・ひろし〉(小学館、1998年/集英社文庫、2002年)】


行き過ぎた格差にマーケットが鉄槌を下す/『富の不均衡バブル 2022年までの黄金の投資戦略』若林栄四