麻薬で殺人に駆り立てられる少年兵

 二人と話をしているうちに、わたしはあることに気がつきました。
 二人の体に、ミミズ腫(ば)れのような大きな引っかき傷があるのです。
 最初は(ジャングルややぶの中でくらしていたのだから、木の枝とかで引っかいた時の傷なのかな?)と思っていました。でも、それらは自然にけがをしてついた傷ではありませんでした。
 ムリアの左まぶたのすぐ下に、三日月の形をした傷がありました。気になったわたしは、たずねてみました。
「その傷はどうしたの?」
「カミソリで切ったんだ」
「えっ、自分で? どうして?」
「カミソリで切って、そこに麻薬をうめこむんだ。うめこんでぬい合わせる。
 麻薬を入れられると、とても正気じゃいられない。殺したいと思った相手をすべて撃ち殺してしまうんだ。」
 子ども兵士たちが、麻薬を飲んだり、鉄砲の弾につめられた火薬を飲んでいるという話は聞いたことがありました。
 でも、まさか体に傷をつけてうめこんでいるなんて話は今まで聞いたことがありませんでした。
「だれにやられたんだい?」
「最初は戦いに行く前に大人の兵士にやられたんだ。
 使うのは細かい粉にした麻薬だよ。ここでは麻薬はどこででも手に入るし、お酒よりも安いからみんな使っていた。」(中略)
「麻薬をうめこまれると、もう頭の中がグルグルになって何がなんだかわからなくなる。
 そしてものすごく人を殺したくなる。だれを殺すのも怖くなかったし、自分が死ぬことも怖くなかった。なんの感情もなく、急にただ殺したいって思うようになるんだ。」


【『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』後藤健二汐文社、2005年)】


ダイヤモンドより平和がほしい―子ども兵士・ムリアの告白