古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

戦争

 男が言うには、戦争に行って生きて帰ってきた人間の魂は皆死んでしまっており、その魂の死を断固として拒んだ勇敢な人間たちは皆肉体が死んでしまったのだそうだ。つまり戦争というものは行けば誰一人として生きて帰らないのであり、男もまたフィリピンの密林の中で魂を失った、人間の抜け殻なのだと言う。


【『増大派に告ぐ』小田雅久仁〈おだ・まさくに〉(2009年)】


増大派に告ぐ