文字を読む脳

(スタニスラス・)デハーネ(※フランスの神経科学者)の見解をあえて膨らませてみると、文字を読む脳はどうも、本来、視覚専用としてではなく、視覚を概念形成機能および言語機能と結びつけるために設計された、古いニューロン経路を活用しているように思われる。ここで言う、視覚と概念形成機能や言語機能との接続は、たとえば、地面に残された足跡の形状を素早く認識して、これは危険を知らせるものだと即座に推論したり、認識した道具や捕食動物、敵を、それを表す単語の検索と結びつけたりすることである。したがって、読み書きや計算などの機能の発明という作業に取り組むことになった時、私たちの脳は、独創的な三つの設計原理、つまり、古くからある構造物間に新たな接続を形成する能力、情報のパターン認識を行うために精巧に特殊化された脳領域を形成する能力、そして、それらの脳領域から得られた情報を自動的に採用して関連づける能力を、意のままに使いこなした。読字の進化、発達および障害のいずれの根本にも、この三つの脳構造の原理が何らかの形で働いている。


【『プルーストイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』メアリアン・ウルフ/小松淳子訳(インターシフト、2008年)】


プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?