そこで、背骨の骨が歩く歩かないによって、これほど影響されるのはなぜかということになるが、廃用性骨萎縮に関するいろいろな基礎研究からわかってきたのは、次のようなことである。
骨には「物理的なストレス」、つまり骨に体重が加わる、筋肉でグッと引っ張られるという本来の意味のストレスであるが、そのような物理的なストレスが一定量加わっているのが正常な状態で、それによって骨のカルシウム代謝が正常に保たれている。ところがストレスがなくなると、骨はどんどん破骨細胞によって壊されていくのである。
しかし、車イスに座っていても背骨には上半身の体重、つまりストレスがかかってくる。歩くのと座っているのとどこが違うのかと私たちも不思議に思って考えた。すると、両者は同じではない。歩くということは一歩ごとに、床にドン、ドンと体重が落ちる。それに対して「床反力(ゆかはんりょく)」という、床からの物理的な半力が起こる。体のほうから見れば、その床反力が足から骨盤、背骨を経て頭蓋骨にまで伝わっている。この衝撃こそ骨へのストレスにほかならない。