1冊読了。
98冊目『石原吉郎詩文集』石原吉郎〈いしはら・よしろう〉(講談社文芸文庫、2005年)/今月の課題図書。やはりこれは、V・E・フランクルとセットで読むべきだろう。ナチス・ドイツの強制収容所とシベリア抑留の類似と相違。石原は凡人であった。だが彼は鹿野武一〈かの・ぶいち〉の行為を見つめる眼をもっていた。鹿野への共感と憧れによって、石原は精確で透明な言葉を手に入れた。それでも石原は鹿野になれなかった。40代で記したノートは煩悶と懊悩で埋められている。短篇小説「棒をのんだ話」の何と味わい深いことよ。