古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

個人の思想というものはありえない

 個人の思想というものはありえないし、思想の実践的営為は個人的なパースペクティヴを否定すること以外の出口を持つこともありえない。哲学というイデーそのものに、ある一つの原初的な問いが、すなわちいかにして人間的な情況から外へ出るのかという問いが結ばれている。いかにして必要性による行動に服従し、有用な区切りを立てるよう定められている反省的思考から、自己意識へと、すなわち本質なき――が、意識的な――存在の意識へと横滑りしていくのか、という問いが結ばれているのである。


【『宗教の理論』ジョルジュ・バタイユ湯浅博雄訳(人文書院、1985年/ちくま学芸文庫、2002年)】


宗教の理論 (ちくま学芸文庫)