古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

人類史の研究を助けるシラミ

 やっかいなシラミなのだが、人類史を研究するうえでありがたい特徴も持っている。それぞれのシラミの種が、ほぼ決まった寄生先を持つことだ。例えば、人類に寄生するシラミはチンパンジーなどほかの動物には寄生せず、逆に、ほかの動物の寄生するシラミは人類に寄生していないらしい。
 人類とチンパンジーが枝分かれする前、共通の祖先として暮らしていた時代、ある一種類のシラミがこの共通祖先に寄生していた。人類とチンパンジーがそれぞれに枝分かれして独自の道を歩み始めると、それに歩調を合わせるように、シラミも人類にだけ寄生するものと、チンパンジーにだけ寄生するものに分かれたようだ。


【『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』三井誠(講談社現代新書、2005年)】


人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)