古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

高橋源一郎


 1冊読了。


 94冊目『「悪」と戦う高橋源一郎河出書房新社、2010年)/『13日間で「名文」を書けるようになる方法』にノックアウトされたら、本書を読まないわけにはいかない。主役の幼い兄弟は高橋の子がモデルになっている。私はポップ文学なるものに全く興味がないので、高橋の小説を読むのは初めてのこと。案の定、肌が合わない。それでも文字が大きく、行間も広いので2時間ほどで読める。兄のランちゃんがパラレルワールドで悪の多様な姿に遭遇する。そしてこれ自体が一種の試験になっており、ランちゃんは弟のキイちゃんと世界を救うべく戦いを挑む。だが、真の善良さは自問自答する中で揺れ惑い、躊躇(ためら)う営みに存在した。善良な心とは、振り子の遠心力に支えられているのかもしれない。本書の中でお父さんの高橋が「私は唯物主義者だ」と言うくだりがある。全編を通じてそれらしい暴力シーンが挿入されている。内容はそこそこ面白かったが、私は高橋が嫌いになった。