古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

齊藤誠、ブライアン・フェイガン、ルソー、福永武彦


 3冊挫折、1冊読了。


 挫折52『競争の作法 いかに働き、投資するか』齊藤誠(ちくま新書、2010年)/威勢のよさが裏目に出ている。文章に臭みがあって読みにくい。50ページで挫ける。


 挫折53『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン/東郷えりか、桃井緑美子〈ももい・るみこ〉訳(河出書房新社、2001年/河出文庫、2009年)/これも読みにくかった。30ページほどで挫ける。『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』の方がはるかに面白かった。


 挫折54『社会契約論』ルソー/桑原武夫、前川貞次郎〈まえかわ・ていじろう〉訳(岩波文庫、1954年)/季節が悪かった。梅雨時には不向きだ。60ページ過ぎで挫ける。これは後で必ず読み直す。


 93冊目『廃市・飛ぶ男福永武彦新潮文庫、1971年)/絶品。『鳥 デュ・モーリア傑作集』といい勝負である。日本にこれほどのストーリーテラーが存在した事実に驚く。「未来都市」は完全なSF作品で、「飛ぶ男」も実に斬新な構成である。主役は物語であって、登場人物は全員が黒子と化している。読者の感情移入を拒絶しながら、物語の結構だけで福永は勝負しているように見える。『忘却の河』よりはるかに面白かった。