冷ややかな嘲笑をもってコントロールされるピアノ

 眺めていると、アイダはさっきの楽節をさらに数度繰り返し弾いた。それからいきなり、迫りくる怒涛のような章に突入した。音楽が築かれ、迸(ほとばし)った。華やかなアルペジオを貫く叩きつけるような不協和音、余韻を全く残さずに鋭く断ち切ったフォルテッシモ、そして再び叫び、歌い出す。だが、常に冷ややかな嘲笑をもってコントロールされていた。


【『ピアノ・ソナタ』S・J・ローザン/直良和美訳(創元推理文庫、1998年)】


ピアノ・ソナタ (創元推理文庫)