古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

7000年前に脳手術が行われていた

 これは、7000年前の人間の頭蓋骨。7000年前っていうと、想像もできないくらい遠い昔の話だよね。古代文明、たとえばメソポタミア文明エジプト文明はいかまら4000年から5000年前のことでしょ。それよりももっと昔の人の頭蓋骨。
 この頭蓋骨の上の方の2箇所がへこんでいるのがわかる? これ、手術した跡なんだよ。なんで手術した跡とわかるかっていうと、いちど頭蓋骨を開けると、その穴を開けた部分の骨はもちろんなくなるよね。でも、この写真では、まわりの骨細胞が増殖して穴が埋められているんだ。
 もし事故や武器なんかで、脳を打って死んじゃった人の頭蓋骨だったら、ただここに穴が開いているだけだよね? だって、死んじゃったら増殖できないから。そうじゃなくて、これは手術して、しかもそれがちゃんと成功している跡なんだ。手術の後ちゃんと生きた。少なくとも頭蓋骨が再生するまではこの人は生きていた。


【『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二〈いけがや・ゆうじ〉(朝日出版社、2004年/講談社ブルーバックス、2007年)】


進化しすぎた脳 (ブル-バックス)