古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

文庫化『ゴーリキー・パーク』マーティン・クルーズ・スミス/中野圭二訳(ハヤカワ文庫、2008年)



ゴーリキー・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) ゴーリキー・パーク 下 (ハヤカワ文庫 NV ス 10-4)

 モスクワのゴーリキー公園で雪の下から男女3人の射殺体が発見された。いずれも顔面を刃物で削ぎ落とされ、指先も切断されていた。捜査を命じられた民警の主任捜査官レンコは、人類学研究所に被害者の顔の復元を依頼する一方、被害者の遺留品から運命の女性イリーナと出会う。反体制派の彼女に次第に魅かれていくレンコ。そして捜査線上に浮かぶアメリカ人の毛皮商……ソ連社会の暗部をかつてないリアリティで描いた問題作。


 ゴーリキー公園の顔と指のない三つの死体――それは誰も触れることの許されぬソビエト社会の根深い矛盾を象徴していた。ようやくレンコは殺人犯の正体をつかむが、検事局長から捜査の終了を命じられる。彼はけっして掘り起こしてはならない過去を発見してしまったのだ。主任捜査官の地位さえも奪われたレンコは、メーデーの夜、ついに犯人と対決する。そして彼が海の彼方で見た、驚愕の真実とは? 英国推理作家協会賞受賞作。