「ゲーデルの仕事は、数学的議論の論理的構造をはかりしれぬほど深め、また豊かにしたのみならず、人間の理性一般における限界というものの役割を明らかに示したのです」。
これは1966年4月22日、オハイオ州立大学でゲーデルの60歳を祝う――日本でいえば還暦祝い――学会が開かれた際、当時プリンストン高等学術研究所の所長をしていたオッペンハイマーが挨拶に立って、ゲーデルの業績を称えた言葉です。ゲーデルの不完全性定理については、いろいろな人がさまざまな賛辞を贈っていますが、このオッペンハイマーの言葉はその中でもおそらく、もっとも有名な歴史的名文句といっていいでしょう。