古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

静かな配慮

 ひと月ほどたって、籍をいれたよ、その報告を聞かされた際も、そうか、と答え、なにもたずねはしなかった。こちらから話題を変えた。するとふいに柿島がいったのだ。堀江、きみは人のこころがわかる人間だな。私は聞かなかったふりをして世間話をつづけた。


【『名残り火 てのひらの闇II』藤原伊織文藝春秋、2007年)】


名残り火―てのひらの闇〈2〉 (文春文庫)