ハーバード大学の心理学者デビッド・マクレイランドは、最も深い感情を自分自身の心の中にしまっておく性向のある人は、“危機”に直面した際に、免疫系統の力を弱めるホルモンを放出するということを明らかにしている。
これまでに報告された事実から、ヘブライ大学のジェラルド・カプランは、強いストレスに対して心理的なサポートのない人たちは、サポートに恵まれた人たちに比べて、身体や心の病気にかかる率が10倍も高い、と結論づけている。
したがって、人間的なつながりを最も必要としながら、それをほとんど持てない人たちの死亡率が極端に高いということは驚くに値しない。
『失意 医学的にみた孤独の結末』という本の中で、ジェイムズ・M・リンチは、仲間づき合いの欠如と心臓疾患との驚くべきつながりを説明している。彼はその中で、人生の危機に直面し、しかも人間的な接触の恩恵を受けていないと、人間は生命が脅かされるような心臓障害にかかることが多い、と述べている。リンチはまた、コミュニケーションの機会がある場合には、身体的な障害が起こる危険性が少なくなるとも言っている。
「人間の孤独が強まっているということが、20世紀における病気の最も深刻な原因のひとつかもしれない」これが彼の結論である。
医師たちは、情緒的なサポートが病気の回復過程で、最も近代的なテクノロジーと同じくらい効果的ではないかということを認識し始めてきている。
【『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル/小此木啓吾〈おこのぎ・けいご〉訳(フォー・ユー、1987年)】
- ガボール・マテ
- 『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
- ジュリアス・シーガル
- コミュニケーションの可能性/『逝かない身体 ALS的日常を生きる』川口有美子