吉永良正、高橋源一郎


 2冊読了。


 52冊目『新装版 数学・まだこんなことがわからない 難問から見た現代数学入門吉永良正講談社ブルーバックス、2004年)/3〜4日前に読み終えていたのだが書くのを失念していた。講談社出版文化賞受賞作品。旧版が出たのは1990年のこと。数式をすっ飛ばして読んでも十分面白い。原理という点において宗教と数学は似ているが、数学の方が桁違いに美しい。そして歴史に名を連ねる天才数学者の創造力は、宗教的天才と響き合う余韻がある。


 53冊目『13日間で「名文」を書けるようになる方法高橋源一郎朝日新聞出版、2009年)/一度も本を閉じることなく読了した。明治学院大学の講義を編んだものとしては、加藤典洋著『言語表現法講義』に続く作品。名文を書く方法の根源をまさぐることで、「ものの考え方」を激しく揺さぶり、思い切り振り回している。そして実際は文学というよりも哲学の領域に踏み込む。ここには紛(まが)うことなき教師と生徒の「出合い」がある。出会いというよりも出合い。そのぶつかり合いは時にソクラテスの対話を髣髴(ほうふつ)とさせ、プラトンが創設したアカデメイアを想起させるほど。圧巻は休講のあとの十日目。まず高橋は机を壁際に移動させ、教壇から降りて学生と同じ目の高さで語り始める。前回の講義を休んだことを詫(わ)び、その理由を明かした。2歳になる高橋の子供が急性脳炎になった、と。飽くまでも淡々としていて、小説家らしい的確な言葉で語られている。そうでありながらも、生の根源を探る言葉が不思議な宗教性を帯びている。まるでサンガのようだ。経典本といっていい。