1998年にはローマで国際刑事裁判所(ICC)の設立が賛成120カ国、反対7カ国で採択されたが、これに反対票を投じたのがアルジェリア、リビア、カタール、イエメン、中国、イスラエル、そしてアメリカである。国際刑事裁判所とは集団虐殺等の非人道的な行為を犯した個人を裁くことを目的とする常設の国際機関だが、これに対しアメリカは「アメリカが支持できるのは国連の安全保障理事会が要請した案件のみを扱う裁判所だ」として反対した。安全保障理事会の決議ならアメリカは拒否権を有しているからである。「アメリカ政府が認めない限り、アメリカ人を裁くことは許さない」というこの態度は、世界中の人権擁護団体を激怒させた。さらに、ウィリアム・コーエン国防長官(当時)は、国際刑事裁判所の裁判権を制限したアメリカ案を支持するように、他国へ圧力をかけた。「アメリカ案に賛成しなければ、米軍はあなたの国の領土を守らない」と脅したのである。
【『世界反米ジョーク集』早坂隆(中公新書ラクレ、2005年)】