「空」の語意

 ・「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力
 ・「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論
 ・枢軸時代の変化
 ・「空」の語意

『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集

 次に「空」という語の意味を考えてみよう。「空」という漢字は、サンスクリットの形容詞「シューニヤ」(sunya 空なるもの)と抽象名詞「シューニヤター」(sunyata 空なること、空性)との両方の訳語として用いられる。抽象名詞である場合は「空性(くうしょう)」と訳す場合も多い。また「シューニヤ」という語はゼロを意味するが、現在のヒンディー語でも「シューニヤ」はゼロの意味に用いられている。
「空」という漢語の意味の一つは、すいているということだ。例えば「今日は電車がすいていた」という。これは客車の乗客が少なかったことをいう。また、「腹がすいた」というときは、腹自体がないのではなくて胃の中にあるべきものがないことをいう。入れ物であるyの中にあるべきxがないのが「空」という漢語の基本的意味なのである。


【『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵講談社学術文庫、2003年)】