ツチ族はとっくに死んでいた

ルワンダの文化は恐怖の文化だ」とンコンゴリは続けた。「みんなの言葉を覚えている」ンコンゴリは息も絶え絶えの声色を作り、顔を絶望に歪(ゆが)めた。「『どうか祈らせてくれ、それから殺してくれ』それとも『道ばたで死にたくはない。自分の家で死にたい』」元の声に戻して続ける。「そこまで虐げられ、諦めてしまったら、もう死んだも同然だ。ジェノサイドがすごく長いあいだ準備されていた証拠だよ。厭(いと)わしい恐怖だ。ジェノサイドの犠牲者たちは、ただツチ族だというだけでも死ぬものだと思いこまされていた。あまりに長いあいだ殺されつづけてきたので、とっくに死んでしまっていたんだ」


【『ジェノサイドの丘』フィリップ・ゴーレイヴィッチ柳下毅一郎〈やなした・きいちろう〉訳(WAVE出版、2003年)】


ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実