古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

J・クリシュナムルティ


 1冊読了。


 45冊目『未来の生』J・クリシュナムルティ/大野純一訳(春秋社、1989年)/クリシュナムルティ26冊目の読了。『英知の教育』と同じく、インドのクリシュナムルティスクールの生徒に向けた講話と質疑応答が収められている。実にわかりやすい内容だ。日本人が読むと難解に感じるのは、日常生活における宗教的土壌を欠いているためであろう。だが、世界に目を転じれば明らかに宗教が紛争の原因となっていることに気づく。世界を変革しようと思えば組織的宗教と瞑想というテーマを避けて通ることはできない。そうすると今度はクリシュナムルティの言葉に捉われてしまい、知識として受け止めてしまう。彼と似たような言葉を駆使し言い回しを身につけて安堵するのだ。クリシュナムルティは人間が進むべき道を指し示した。その指をじっと見ているだけなのか、歩いてゆくのかは我々に委ねられている。