古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ゲオルク・グロデック


 1冊挫折。


 挫折14『エスの本 無意識の探究』ゲオルク・グロデック/岸田秀、山下公子訳(誠信書房、1991年)/原書は1923年刊。エスとはフロイト理論で情動を示す用語である。きっと脳の扁桃体で形成されているのだろう。女友達への手紙といった形式でエスを解説している。「人間は自分の知らないものに動かされており、エスに支配されている」とのこと。「そう言われてもなあ……」というのが率直な感想だ。元々私はフロイトにも興味がないので、単なるこじつけのように感じた。エスという名前をつけたところで、どうせ脳内に存在するのだ。クリシュナムルティを読むようになり、以前ほど意識に対して興味を覚えなくなった。所詮、意識とは知覚の集中に過ぎない。ストレス社会が人の心を捻じ曲げるようになってから精神分析が脚光を浴びているが、私は不信感を払拭することができない。彼等がやっていることは、せいぜい「物語の再構成」と投薬だけであろう。人間心理を小分けにするよりも、精神を統合するべきではないのか?