55年体制は帝大出身の政治家を帝大出身の官僚が支え、経団連に集う帝大出身の財界人たちが政治資金を供給してきた

 私は田原総一朗の『日本の政治 田中角栄角栄以後』(講談社・02年刊)の一節をふと思い出した。それによると、72年の田中内閣の成立は日本の権力構造に革命的な変化をもたらした。
 戦後の吉田茂以来の歴代首相は、2ヵ月間だけその座にあった石橋湛山を除いて、すべて東大、京大を卒業し、高級官僚を経て政治家となったエリートばかりだった。官界や財界も旧帝国大学出身者が仕切っていたから、彼らはその学閥によって政官財界の頂点に君臨した。帝大出身の政治家を帝大出身の官僚が支え、経団連に集う帝大出身の財界人たちが政治資金を供給する。それが従来の55年体制だった。
 ところが、この体制は牛馬商の息子で高等小学校卒の田中による政権奪取でひっくり返った。田中は首相を辞めた後も、最大派閥の力で政界に君臨した。田中引退後も竹下、金丸、小沢から梶山静六野中広務に至るまで、旧帝大とは無縁の旧田中派の政治家たちが政治の主導権を握り続けた。
 しかも彼らは、小沢ら二世議員を除けば、みな地方出身のたたき上げである。極端な言い方をすれば、田中政権以来、日本の政治は平等志向を内包した非エスタブリッシュメント出身者による「土着的社会主義」の色合いを持つようになった。マスコミが強調する経世会の金権体質はその一側面にすぎない。


魚の目/特集「小沢一郎」



日本の政治―田中角栄・角栄以後