古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

銀行員だった父・義平の遺書

 人間が人間として生きなかったということぐらい、恥ずかしいことはありますまい。松の木は松の木としてのびていきます。ライオンは一生ライオンの声を失いません。しかるに人間が人間らしく生きなかったということは、金銭登録器のような生活しかしなかったということは、人間としてこれ以上の恥辱はないと思います。


【『真実一路』山本有三著(新潮社、1936年/新潮文庫、1950年)】



真実一路 (新潮文庫)