2冊読了。
9冊目『生と覚醒のコメンタリー 3 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ/大野純一訳(春秋社、1984年)/日本語版は全4冊となっているが、原書は3冊で1956年、1959年、1961年に刊行されている。とても半世紀前の本とは思えない。相談者とのやり取りも古めかしさを感じるところがない。つまり、真の対話は人間の本質を見据えているということなのだろう。それにしても、このシリーズはクリシュナムルティが描く風景が秀逸で中毒性を覚えるほど。そして洞察のヒントが隠されている。風景描写によって読者はクリシュナムルティの「眼」を体験できるのだ。クリシュナムルティ関連はこれで14冊目の読了。いくら読んでも学び尽くすことはないだろう。
10冊目『ひとりっ子』グレッグ・イーガン/山岸真編・訳(ハヤカワ文庫、2006年)/久々の本格SF。文章がいい。短篇集なので、イーガンのSF的概念をつかむのに手間取る。7篇のうち半分ほどが数学SFといった趣向。ラストの「ひとりっ子」はストーリーがもたついているが、他は面白かった。なかんずく「決断者」が凄い。ダニエル・C・デネット著『解明される意識』と、マーヴィン・ミンスキー著『心の社会』からヒントを得た作品である旨が付記されている。着用することで「空観」状態が現れるという代物が登場する。グレッグ・イーガンならクリシュナムルティの世界を描けそうな予感がした。