古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

J・クリシュナムルティ


 1冊読了。


 132冊目『生と覚醒のコメンタリー 1 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ/大野純一訳(春秋社、1984年)/これがクリシュナムルティ法華経に該当すると思われる。3〜5ページのテキストなのだが、読み手にはロッククライミングに匹敵する力が求められる。実に様々な光景が美しく描写され、対話調で書かれている。問答形式が日蓮の『立正安国論』を想起させる。全4冊。1と4が既に絶版となっているが、大野純一がコスモス・ライブラリーから出版してくれることを期待する。クリシュナムルティが描き出す情景は、一瞬を鮮やかに切り取ったような世界で、時間の経過を感じさせない。「現在という瞬間を生きる」意味が何となく理解できる。研ぎ澄まされた五官がどれほど豊穣な感受性に満ちたものであるかを示している。クリシュナムルティ作品の読了はこれで7冊目。