古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

戦争犯罪を「自分の問題」として問い直す

 湯浅謙さんは、過去の自分の行為を自分の問題として意識し続けてきた。いつも、させられた行為、皆で行ったのだから仕方がないと弁明している限り、結局は、自分の人生も無かったことになる。それでは個人としての一生を生きたのではなく、ある集団に固定された、単なる集団のなかの一人としての人生が終っていく。自分の行為として、良いことも悪いことも引き受け、その意味を問うことによって、自分の一回限りの生を取り戻す。それが湯浅さんの戦後の日々であった。


【『戦争と罪責』野田正彰(岩波書店、1998年)】