古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいある

 ホースの角度をちょっと変えると、縁側からも小さな虹を見ることができた。太陽の光の七つの色。それはいつもは見えないけれど、たったひと筋の水の流れによって姿を現す。光はもともとあったのに、その色は隠れていたのだ。たぶん、この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。虹のように、ほんのちょっとしたことで姿を現してくれるものもあれば、長くてつらい道のりの果てに、やっと出会えるものもあるに違いない。ぼくが見つけるのを待っている何かが、今もどこかにひっそりと隠れているのだろうか。


【『夏の庭 The Friends』湯本香樹実〈ゆもと・かずみ〉(新潮文庫、1994年/徳間書店、2001年)】


夏の庭―The Friends 夏の庭―The Friends (新潮文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)