古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『正統と異端 ヨーロッパ精神の底流』堀米庸三(中公新書、1964年)



正統と異端 ヨーロッパ精神の底流

 目的は手段を正当化しない。たとえそれが人類救済のためであっても。すでに11世紀のローマ法王は、教会の腐敗をただし正統の信仰をたてるため、異端的手段を用いた。その結果は、12〜13世紀の一大異端運動となり正統を標榜する己れにはね返った。キリスト教会をめぐるこのような正統と異端の激烈な争いは、そのまま現代のイデオロギーの問題にかかわる。西洋中世史家が20年来抱き続けてきたテーマの成果がここにある。