孤高の写真家をめぐり静かに深まりゆく作家の言葉−断想。NHK新日曜日美術館「私の愛する写真家」(08年5月25日放送)をもとにした詩的映像論。生と死の思索。マリオ・ジャコメッリの代表作の他、辺見庸未発表詩篇も収載。
主な目次
第一章 白は虚無、黒は傷跡
スカンノの少年
心と躰に刺青を彫りこまれる
「想像への入口」としてのモノクローム
あらかじめ詩人である男が見る異界
第二章 「時間」との永遠の戦い
「時間の強制」からの離脱
識閾から見る風景
世界はそこに実在するのか
第三章 生に依存した死、死に依存した生
死にゆく者の側から撮られた風景
「死」とむきあう空間のにおい
〈見ること〉と〈見られること〉
「死ぬのもむずかしいのよ」
第四章 資本、メディア、そして意識
「無意識」に入りこむ資本
映像と資本の腐れ縁
資本はジャコメッリさえもとりこむ
倒錯した状況のなかで
第五章 解かれなければならない「謎」、解いてはならない「謎」
謎と自由
表現者はいかにして資本と権力から自由でありえるか
ジャコメッリという人間の手ごたえ
帰結のむこうにはじまりがある