古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

理由なき殺人

 われわれは、理由なき殺人というような言葉が口に合う、その行為があるものとして考えられもすれば、いかにもしっくり感覚される、そういう空気のなかにいる。もはや、単なる殺人には情熱も昂奮も感じないが、理由のない殺人となれば刺戟され、内心の情緒まで攪拌されるような感覚を味わう、そういう状態のなかにいるのだ。


【『内部の人間の犯罪 秋山駿評論集』秋山駿〈あきやま・しゅん〉(講談社文芸文庫、2007年)】


内部の人間の犯罪 秋山駿評論集 (講談社文芸文庫)