野家啓一


 1冊読了。


 99冊目『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見野家啓一〈のえ・けいいち〉(岩波書店、1996年/岩波現代文庫、2005年)/文庫版は副題が削除されている。これは傑作。経典本と言っておこう。2年ほど前から「思想とは物語である」と考えるに至り、それ以来探し求めていたのが本書であったといっても過言ではない。「物語」と「歴史」について、そして科学・文学・宗教との関係性について鋭い考察を加えている。「語る」行為が、「話す」と「書く」の間に位置するという指摘も首肯できる。岡真理著『アラブ、祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)を読んだ人は必読である。また、時間論という点からは広井良典著『死生観を問いなおす』(ちくま新書、2001年)との共通点も見られる。各章冒頭のエピグラフが見事なチョイス。引用も多いのだが決して寄り掛かることがない。濃密な文体でありながら、ダレることなく最後まで疾走している。野家啓一が掘り当てた水脈は、大乗仏教の成立を想起させるほど深くに位置している。「大きな物語」が滅び、「小さな物語」のネットワークが新たな歴史を生むならば、ブログをささやかな武器とすることは可能だ。だがその一方で、「物語り」という文化を育むには一定の時間的経過を必要とするゆえ、最終的には地域に密着したコミュニティのあり方を模索すべきだろう。いやあそれにしても、野家啓一恐るべし。