古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『悪霊にさいなまれる世界 「知の闇を照らす灯」としての科学』カール・セーガン/青木薫訳(ハヤカワ文庫、2009年)/『人はなぜエセ科学に騙されるのか』(新潮文庫、2000年)改題



悪霊にさいなまれる世界〈上〉―「知の闇を照らす灯」としての科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 悪霊にさいなまれる世界〈下〉―「知の闇を照らす灯」としての科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

『コンタクト』などの科学啓蒙書で著名なカール・セーガンはその生前最後の著作として、現代の反科学、ニセ科学、反知性的な動きに鋭く警鐘を鳴らす本書をあえて選んだ。それはなぜか。セーガンはこう論ずる――科学的な考え方はわれわれの方法論のなかでベストの持ち駒である、なぜならそこには「人類は誤りを犯すもの」という前提が組み込まれているからだ、と。根気よく堅実な論旨と秘められた情熱が知的感動を呼ぶ科学解説。


 古代の神話から魔女狩り、そしてニセ科学の跳梁……。反科学、反理性の傾向は歴史を通じてさまざまな仮面をつけて現れる。本書ではUFOによる誘拐譚、ミステリーサークル、偽の記憶症候群など、一見雑多な現象に通底する反理性的傾向が鮮やかに結びつけられ、そうした傾向の危険性が鋭く指摘される。自分の頭で考え、懐疑の心を持ち続けることの重要性を豊富な実例を紹介しながら説く、「科学界の良心」による渾身の一冊。