古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

菅原出、廣宮孝信


 2冊読了。


 84冊目『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出〈すがわら・いずる〉(草思社、2002年)/一昨日、読了。歴史を経済で読み解くと、驚くほど理解しやすくなる。菅原出の作品は初めて読んだが、意図的に抑制した筆致で衝撃的な歴史を淡々と綴っている。アメリカ経済界のエスタブリッシュメントナチスの緊密な関係から、ブッシュ父子と石油業界に至るまでの表には決して出ない経済の深層に迫る。瑕疵(かし)を挙げるとすれば、表紙装画のみ。傑作だ。


 85冊目『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ廣宮孝信〈ひろみや・たかのぶ〉(彩図社、2009年)/とても勉強になった。国会議員は必読のこと。竹中平蔵が提唱した「プライマリーバランス基礎的財政収支)の黒字化」は現政府にも引き継がれているが、それよりも政府支出を増やした方が効果的であることが検証されている。不況対策といえば利下げと公共事業が真っ先に上げられるが、国債発行がこれほど景気にインパクトを与えるとは知らなかった。「政府が100万円支出を増やせば、GDPが233万円増える」そうだ。日本の景気がいつまでもよくならないのは、GDPが伸びていないため。青木秀和著『「お金」崩壊』(集英社新書、2008年)よりも、10倍はためになる内容だ。