株式有料情報の手口/『本当にあった嘘のような話 「偶然の一致」のミステリーを探る』マーティン・プリマー、ブライアン・キング


 Web上には情報商材なるものが多い。その多くが、「絶対に」「確実に」「誰もが」儲けられると謳っている。馬鹿言っちゃいけないよ。そんな手に誰が乗るものか。確実に儲けることができるのは、情報商材を販売している奴だけに決まっている。


 相場関連では圧倒的に株式とFX(外国為替取引)が目立つ。最近、私が尊敬する矢口新(やぐち・あらた)氏までもが有料情報を売るようになった。実に情けないことである。仮に、そこそこ確率のいい情報があったとしても、そんなものは仕手筋の連中が動かす相場の尻尾に過ぎない。


 そもそもマーケットというのは、自分以外の存在は全員が敵なのだ。当たり前の話である。自分が儲かっているからといって、他人にまで儲けさせようなんて人物がいるわけがない。とどのつまりは、自分のポジションを有利にする目的以外、考えられない。


 本書は小説や映画以上に劇的な偶然のドラマを多数紹介した本であるが、こんな話まで載っている――

 じつを言うと、今回の場合、偶然などではなかった……もっとも、超常的な力や超自然の力が働いたわけではない。この男はニューズレターを発行していたのだが、「私は最新のデータベースを使い、業界内部の事情通から情報提供を受け、高度な計量経済学モデルを駆使して株価予想をしています」と謳ったニューズレターを64000人に送っていたのだ。そのうち32000人分には、来週、ある銘柄の株価が上がると書き、残りの32000人分には下がると書いた。
 翌週の株価がどう動こうと、彼はニューズレターの第二弾を送る――ただし、彼の予測が「当たった」32000人余りの人たちだけに。そのうち16000人分で次の週の株価上昇を予測し、残りの16000人分では株価下落を予測する。実際の株価変動がどうだろうと、16000人にとっては、彼の株価予測が2週連続で当たったことになる。そのやり方を続けるのだ。この手を使って彼は、自分の株価予測は必ず当たる、という幻想を作りだすことができた。
 彼の目的は、ニューズレターの送り先を、6週連続で予測が(偶然)当たった1000人ほどに圧縮することだった。今後も「お告げ」のご利益にあずかろうと、この人たちなら喜んで、彼の要求通りに1000ドル払うはずだ。


【『本当にあった嘘のような話 「偶然の一致」のミステリーを探る』マーティン・プリマー、ブライアン・キング/有沢善樹、他訳(アスペクト、2004年)】


 実に巧妙な手口だ。相場というのは上がるか下がるかに賭けるので、確率は50%ということになる。ま、その意味では宝くじや競馬の類いよりはずっと確率がいい。手数料も安くなったしね。その50%を逆手に取ったわけだ。


 情報を受け取る側は、当たるか外れるかにしか関心がない。2勝すれば「ホウ」、3勝すれば「凄い」、4勝すれば、これはもう信じるしかない。有り金のありったけを突っ込んでもおかしくない。


 こういったプレイヤー心理を知ればこそ、こんな手口を思いついたのだろう。脱帽するしかない。


 経済誌「フォーブス」でアメリカの長者番付で1位(2008年版)になったウォーレン・バフェットをご存じであろうか? 11歳の時から株式投資を始め、一代で巨額の資産を築いた立志伝中の人物である。総資産額は日本円にして6兆円以上となる。では、バフェットのパフォーマンスはどのくらいかといえば、1956-1969年の平均が29.5%、バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイ社の1965-2006年の平均が21.4%である。

 かのアインシュタインは、「数学における最も偉大な発見の一つは、複利の発見である」と言っています。また、ロスチャイルドは、世界の七不思議とは? と訊かれた時、「それは分からないが、8番目の不思議が複利である、というのは確かだ」と答えたそうです。


【『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵北村慶PHP研究所、2006年)】


 確実に儲けることができれば、資産は雪だるま式に増大してゆくのだ。これだけ見ても、いかに勝ち続けることが難しいかがわかる。


 よく投資本で「何億円稼いだ」ってなやつがあるが、その何億円というのは同じマーケット参加者の金であることを忘れてはなるまい。一般的にマーケットで勝ち続けている人間は5%といわれている。つまり、上がるか下がるかは50%の確率だが、勝ち続けることができるのは5%ってな話だ。一般投資家は長期投資でなければ、まず勝算がない。


本当にあった嘘のような話 (アスペクト文庫 B 19-1)