古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

茂木健一郎


 1冊読了。


 61冊目『脳と仮想茂木健一郎(新潮社、2004年/新潮文庫、2007年)/茂木健一郎をまともに読んだのが実は初めてのこと。全体を通して、小林秀雄講演「信ずることと考えること」が基調となっている。とにかく驚くほど文章がいい。話題も豊富で、芸術全般からゲームにまで及んでいる。小林秀雄に対する敬愛の念と、脳科学者という立場からの対抗心が窺えて興味が尽きない。惜しむらくは、最後まで随想風の内容となっていて科学的な見解を示していないため、読後に物足りなさが残る。だがこれは、茂木健一郎の罪ではなくして、タイトルの問題なのかも知れない。エッセイであるなら、エッセイとわかる題名にすべきだ。これは是非とも続編を望みたい。トール・ノーレットランダーシュ著『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』(紀伊國屋書店、2002年)とは一味違うものを期待する。